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高階学習で学ぶ Ethics (倫理)

高階学習で学ぶ Ethics (倫理)

日本の高等学校における「倫理」という科目は、その名称から連想される範囲を大きく超えて、心理学、哲学、宗教学など複数の学問分野を横断的に取り入れた、国際的にも極めて特異なカリキュラムを形成しています。

中でも注目すべきは、宗教の扱い方です。世界の主要宗教について体系的に紹介する内容が、高校の一般教養科目の一部として正式に組み込まれている点は、特筆に値します。多くの国では、宗教教育は自国で信仰者の多い宗教を中心に据える傾向がありますが、日本のように特定の宗教に偏ることなく、多宗教的な視点から宗教を扱う教育のあり方は、国際的にもきわめて珍しい事例と言えるでしょう。

もっとも、学習指導要領における宗教の取り扱いが、完全に中立・均衡を保っているとは言い切れません。たとえば、国際的な影響力を持つ核保有国で広く信仰されている宗教には相応の重点が置かれている一方で、アニミズムやシャーマニズムといった地域固有の土着信仰は、ほとんど扱われていません。また、神道を宗教として明確に位置づけていないことや、日本人がかつて神と崇めた天皇に関する記述が見られない点も、注目に値します。このように、カリキュラム全体のバランスには一定の課題があると言えるでしょう。

さらに興味深いのは、教科書会社ごとに宗教の扱いに違いが見られることです。とりわけ「ユダヤ教」や「神道」に関する記述には出版社間で明確な差異があり、取り上げ方や記述の深さにばらつきが見受けられます。こうした差異は、生徒が宗教についてどう理解し、どのような視点を持つかに少なからず影響を及ぼしていると考えられます。